








Two Freedoms
Though this work was born from the same “fabric,” it represents an attempt to visualize a more fundamental freedom through the intersection of individual wills.
Jeans have transcended labor to become symbols of individuality, while the canvas has broken its silence to embody self-expression. Each form of freedom arises from an inner impulse, speaking to us as a life cloaked in liberation.
This is not the illusory freedom spoken of within the framework of economic rationality—where wealth expands choice and time offers comfort. It is a more spiritual, elemental force: a will that wells up from the depths of the human soul.
We no longer need the fleeting kind of freedom that exists only to serve consumption.
トゥー フリーダムズ
本作は同じ「生地」から生まれながらも、それぞれの意思が交差し、根源的な自由を視覚化した試みである
ジーンズは労働を越え、個性の象徴となり、キャンバスは沈黙を破り、自己表現の象徴となった。どちらの自由も、内なる衝動から立ち上がり、解放をまとった命が語りかけてくる
それは、現代において「富が選択を広げ、時間が安らぎを与える」とされる経済合理性の中で語られる幻想的自由とは異なり、より精神的で根源的、そして人の奥底から湧き上がる意志の力である
消費を前提とした、かりそめの自由など、もう私たちには必要ないだろう
Category: Concept Painting
Medium: Canvas, Fabric Painting, Mixed Media
Dimensions: H530×W455×D30 – H1620×W1303×D30mm
Photography: Yudai Nakaya
Collection: Private collection
Year: 2025
作品解説 & インタビュー
語られぬ自由、描かれる自由——「Two Freedoms」が問うこと
中谷が「Two Freedoms」で問いかけているのは、現代における「自由」の実態と、それを取り巻く構造だ。制作のきっかけには、表現環境に対する違和感があったという。たとえば、企業の広告費によって支えられている業界構造や、そこから派生する規制・ルールの影響である。特定の価値観が“正しさ”として優先され、表現者が無意識のうちに周囲の評価やモラルを過剰に意識してしまう現状に対し、彼は懸念を抱いていた
「たしかに表現の自由が行き過ぎることもあるけれど、逆にそれを抑え込むような偏ったモラルが、創作の意欲や幅を狭めているのではないだろうか」と語る。その問題意識が、本作のテーマ「自由」へとつながっていった
本作で用いられているのは、キャンバスとジーンズというふたつの素材である。ジーンズは、かつて労働の象徴であったものが、時代とともに個性やライフスタイルの象徴へと変化してきた歴史を持つ。一方のキャンバスは、無言のまま思考を受け止める存在でありながら、自己表現の場として多くの感情を映し出す。どちらも日常的で身近な素材でありながら、その意味を変化させてきた点において、「自由」との深い結びつきを内包している
中谷はこうした素材を通じて、外見的にも内面的にも干渉を受ける現代の表現環境から、少しでも“解放される感覚”を示そうと試みたという。それは、「経済的に得られる自由」や「消費によって与えられる選択肢」といった幻想的な自由ではなく、人間の内面から自然に湧き上がる、より根源的な意志の表出である
「このモラル的な規制は、一時的なものだと感じています。時代や状況が変われば、新たな表現者が現れ、価値観を変化させていくことで、表現は再び広がりを見せていくと思います」
その言葉には、制度への反発というよりも、未来への希望がにじんでいる
また本作は、中谷が新たな表現領域として提唱するカテゴリ「Concept Painting(“描くこと”よりも“考えること”を優先する絵画表現)」の一環として制作された。コンセプチュアル・アートに軸足を置きつつ、視覚的な要素だけでなく、作品に内在する「概念」や「背景」にも重きを置く点で、本作は視覚表現の枠を超えた試みとなっている
「Two Freedoms」は、異なる意志や視点を持つ者同士が、ひとつの「生地」から生まれ、それぞれのかたちで模索を続ける姿を象徴している。内なる衝動から立ち上がるその表現は、現代に漂う幻想的な自由とは一線を画す、より人間的で根源的な在り方であり、経済と精神、ふたつの側面から社会の理想や本質に迫る、ひとつの自由論の実践でもある
Art Commentator: Y. Kato