TAX or LOVE

Tax or Love” is a work that uses playing cards to question the balance between systems and emotions.
With each card turned over, the fluctuations of society and the endeavors of humanity are revealed.

The structure, in which the strongest hand in poker—the royal flush—can never be completed, symbolizes the reality that an ideal equilibrium does not exist.

If the suit is black, tax rises; if red, love rises.
However, when one increases, the other inevitably decreases.

When the system strengthens, love is suppressed; when love flourishes, the system becomes fragile.

Yet, this is merely the surface.
The truth likely lies hidden in a place far beyond what the eye can see.

タックス オア ラブ

本作「税か愛か」は、トランプを使って制度と感情のバランスを問う作品である
カードをめくるたびに、社会の揺らぎと人間の営みを浮かび上がらせる

ポーカーにおける最強の役「ロイヤルストレートフラッシュ」が永遠に揃わない構造は、理想的な均衡が存在しない現実を示す

カードのスートが黒なら税が上昇し、赤なら愛が上昇する
ただし、どちらかが上がれば、もう一方は必ず下がる

制度が強まれば愛は抑えられ、愛が満ちれば制度は希薄になる

だが、それは表層にすぎない
真実は、もっと目に見えない場所に潜んでいるのだろう

Category: Media Art
Medium: Digital Design, Generative Digital Mediam
Dimensions: H2160×W3840px
Engineer: Katsunori Isono
Collection: Private Collection
Year: 2025

作品解説 & インタビュー

税か愛か——めくられる見えざる真実

本作「税か愛か」は、トランプをめくるというシンプルな行為を通じて、制度と感情のせめぎ合いを可視化する試みである

カードのスートによって「税(黒)」または「愛(赤)」が上昇し、一方が上がれば他方が下がる。しかも、最強の役「ロイヤルストレートフラッシュ」は決して揃わない。この構造は、理想的な均衡が成り立たない現実を象徴する

中谷は、トランプ政権の経済政策、特に関税を外交手段とした姿勢に着想を得たという。目に見えない圧力で国際秩序を動かす在り方は、現代社会における法と制度の構造を暗示し、「TAX」の象徴として機能している

一方で「LOVE」は、社会的報酬を求めない親密さや倫理的な行為を指す。カードの赤と青はアメリカ国旗の色でもあり、制度と感情という対照的な価値の緊張を視覚的に際立たせている

「税か愛か」は、制度と感情の選択を観る者に委ねる装置であり、倫理的シミュレーションでもある。カードをめくるたびに何が満ち、何が失われるのか。失うことで満ちることもあるのか。観る者は、選択と不安定さの狭間で、自らの価値観と向き合うことになる

「TAXもLOVEも、ときとして人生を翻弄する。だが、真実はいつも別の場所にある」と中谷は語った。その言葉は、私たち自身がこの不完全な世界でどのように選び、生きるのかへ問いを投げかけている

本作は、税・社会制度と人間の倫理的選択の関係性を考察する応用倫理の一領域でもある

Art Commentator: Y. Kato