



Snow Brothers – Benkei Oshiage
スノーブラザーズ – ベンケイ・オシアゲ
Painting, Oil and acrylic on canvas
H530×W455×D20mm


Snow Brothers – Slip Oedo
スノーブラザーズ – スリップ・ オオエド
Painting, Oil and acrylic on canvas
H530×W455×D20mm


Snow Brothers – Oneshot Yamanote
スノーブラザーズ – ワンショット・ヤマノテ
Painting, Oil and acrylic on canvas
H530×W455×D20mm


Snow Brothers – Minus Toyoko
スノーブラザーズ – マイナス・トウヨコ
Painting, Oil and acrylic on canvas
H530×W455×D20mm


Snow Brothers – Bugs Marunouchi
スノーブラザーズ – バグズ・マルノウチ
Painting, Oil and acrylic on canvas
H530×W455×D20mm


Snow Brothers – OD Keio
スノーブラザーズ – オーディー・ケイオウ
Painting, Oil and acrylic on canvas
H530×W455×D20mm


Snow Brothers – Esquisse Ⅰ
スノーブラザーズ – 構想図 Ⅰ


Snow Brothers – Esquisse Ⅱ
スノーブラザーズ – 構想図 Ⅱ

Snow Brothers – Studio Scene
スノーブラザーズ – 制作現場

Snow Brothers
スノーブラザーズ
Snow Brothers
“Snow Brothers” depicts two brothers struggling to survive in the city while nearly crushed beneath the forces of lookism and the endlessly expanding waves of diversity and competing values.
There is no such thing as a perfect story. Within the dense web of human relationships, in a city like Tokyo where even the smallest delay is unforgivable, the brothers strive simply to make it through another day.
The identities demanded of them often come with suffocating pressure. Yet true beauty lives within the heart—noticed only after wounds, mistakes, and failures accumulate. Even the smallest lack or trace becomes a testament to a life lived.
Under the weight of these pressures, the brothers slowly drift toward overdose. Like frozen fingers searching along a snow-covered path, they can no longer walk on forever. White light dazzles like a celebration, yet chills to the marrow, gradually erasing the contours of life itself.
What remained was a faint afterimage of the brothers, like a memorial portrait or bare bone.
“Snow Brothers” is a story of two siblings living in the fragile space between light and shadow—a record of the inescapable reality they faced, and the traces of life they left behind.
スノーブラザーズ
「Snow Brothers(スノーブラザーズ)」は、ルッキズムや、無限に広がる多様性・価値観の波に押しつぶされそうになりながらも、必死に都市で生きる兄弟の姿を描いた作品である
完璧な物語など存在しない。複雑に絡み合う人間関係の中、わずかな遅れも許されない都市・東京で、彼らは今日も生き抜こうとしている
その中で求められるアイデンティティは、ときに息苦しさを伴う。しかし本当の美しさは心に宿るものであり、傷や過ち、失敗を重ねてはじめて気づくものだ。小さな欠落や痕跡でさえ、その人を形づくる「生の証」である
だが、重圧に耐えきれず、兄弟は静かにオーバードーズへと傾いていく。雪に覆われた道を凍えた指先で探るように、彼らはもう永遠には歩き続けられない。白は祝祭のように眩しく、同時に骨の髄まで冷たく、命の輪郭をゆっくりと溶かしていく
その姿は「遺影」や「白骨」のように、わずかに残された兄弟の残像であった
「Snow Brothers」は、光と影のはざまで生きた兄弟たちの、逃れようのない現実と、生の痕跡を描く物語である
Category: Painting
Medium: Oil and acrylic on canvas
Dimensions: H530×W455×D20mm
Photography: Yudai Nakaya
Collection: Private Collection
Year: 2025

作品解説 & インタビュー
争いと平和の狭間で——End and Begin が見つめる、芸術の萌芽
「争いには点があって、平和には線がある」
中谷の作品「End & Begin」は、詩的な言葉で始まる。その言葉は一つひとつが鋭く、簡潔でありながら、私たちの記憶や感情の深部を静かに揺さぶる。争いと平和を対比させながら、私たちが繰り返す構築と崩壊の歴史のなかで、芸術がどのように芽吹いていくのかを提示している
本作において中谷は、「人に関わる漢字や記号」をモチーフとして用いている。ビジュアルとして積み上げられたそれらは、一見すると人と社会が築いてきた「かたち」のようでいて、実のところ、心の豊かさや内面的な平和とは無縁であることが見えてくる。彼はインタビューの中で語る
「今作で見せるビジュアルは、外見的な“築き”にすぎず、精神的な成熟を表すものではない。人は社会の中で、同じような過ちを幾度となく繰り返している。その背景には、理解の欠如があるように感じる。だからこそ、それを見つめ直す必要がある」
「ダイバーシティ」「サラダボウル」「インクルージョン」「エクイティ」「ベルロンギング」現代社会で多様性について頻繁に語られるこれらの言葉たち。中谷はその価値を否定するわけではない。しかし、様々な背景を持つ人々が築き上げた理想が、問題となり衝突し、崩れ、そしてまた築かれていくという循環にこそ、注目し、疑問を持つべきだと考えている
では、その繰り返しを止めるために必要なものは何か。彼はこう続けた
「最低限の衣食住、少しの動物や自然があれば、十分なのではないだろうか。そこには余白があり、他者への理解や愛情が育ってくる。やがて芸術や哲学も生まれる。多くを求め、余計なものを抱えこんでしまうからこそ、人はまた同じ過ちを繰り返すのではないだろうか」
中谷の作品は、声高に何かを主張するものではない。沈黙の中に置かれた無垢な文字と記号の集積が、観る者それぞれに異なる問いを投げかけてくる。私たちは今もなお、争いの「点」と平和の「線」とのあいだを往還している。終わりと始まりの狭間で生まれる芸術が、新たな「気づき」となることを、彼はいつも願っている
本作は、争いと平和の象徴的な対比から生まれる芸術の萌芽であり、社会のあり方に問いを投げかける平和論ともいえるだろう
Art Commentator: Y. Kato