






End & Begin
Conflict has a dot,
Peace has a line.
Conflict has heat,
Peace has nothingness.
Conflict has a voice,
Peace has silence.
Conflict has a beginning,
Peace has an end.
When we build, collapse, and realize—
Art is born again.
This work is composed using kanji and symbols related to human nature.
終わりと始まり
争いには点があって
平和には線がある
争いには熱があって
平和には無がある
争いには声があって
平和には沈黙がある
争いには始まりがあって
平和には終わりがある
築き、崩れ、気づくとき
また芸術は生まれる
本作は、人に関わる漢字や記号を用いた作品である
Category: Sculpture, Installation
Medium: Mixed Media
Dimensions: H400×W400×D400 to H5000×W5000×D5000mm
Photography: Yudai Nakaya
Collection: Private Collection
Year: 2025
作品解説 & インタビュー
争いと平和の狭間で——End & Begin が見つめる、芸術の萌芽
「争いには点があって、平和には線がある」
中谷の作品「End & Begin」は、詩的な言葉で始まる。その言葉は一つひとつが鋭く、簡潔でありながら、私たちの記憶や感情の深部を静かに揺さぶる。争いと平和を対比させながら、私たちが繰り返す構築と崩壊の歴史のなかで、芸術がどのように芽吹いていくのかを提示している
本作において中谷は、「人に関わる漢字や記号」をモチーフとして用いている。ビジュアルとして積み上げられたそれらは、一見すると人と社会が築いてきた「かたち」のようでいて、実のところ、心の豊かさや内面的な平和とは無縁であることが見えてくる。彼はインタビューの中で語る
「今作で見せるビジュアルは、外見的な“築き”にすぎず、精神的な成熟を表すものではない。人は社会の中で、同じような過ちを幾度となく繰り返している。その背景には、理解の欠如があるように感じる。だからこそ、それを見つめ直す必要がある」
「ダイバーシティ」「サラダボウル」「インクルージョン」「エクイティ」「ベルロンギング」現代社会で多様性について頻繁に語られるこれらの言葉たち。中谷はその価値を否定するわけではない。しかし、様々な背景を持つ人々が築き上げた理想が、問題となり衝突し、崩れ、そしてまた築かれていくという循環にこそ、注目し、疑問を持つべきだと考えている
では、その繰り返しを止めるために必要なものは何か。彼はこう続けた
「最低限の衣食住、少しの動物や自然があれば、十分なのではないだろうか。そこには余白があり、他者への理解や愛情が育ってくる。やがて芸術や哲学も生まれる。多くを求め、余計なものを抱えこんでしまうからこそ、人はまた同じ過ちを繰り返すのではないだろうか」
中谷の作品は、声高に何かを主張するものではない。沈黙の中に置かれた無垢な文字と記号の集積が、観る者それぞれに異なる問いを投げかけてくる。私たちは今もなお、争いの「点」と平和の「線」とのあいだを往還している。終わりと始まりの狭間で生まれる芸術が、新たな「気づき」となることを、彼はいつも願っている
本作は、争いと平和の象徴的な対比から生まれる芸術の萌芽であり、社会のあり方に問いを投げかける平和論ともいえるだろう
Art Commentator: Y. Kato