Butterflies Dream of Human – Trailer #2

蝶の夢 – Trailer #2

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Butterflies Dream of Human

蝶の夢

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Butterflies Dream of Human #1 – Monochrome

蝶の夢 #1 – モノクローム

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Butterflies Dream of Human #2 – Bitten Apple

蝶の夢 #2 – 齧られた林檎

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Butterflies Dream of Human #3 – Nocturne

蝶の夢 #3 – 夜曲

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Butterflies Dream of Human #4 – Butterflies Dream of Human

蝶の夢 #4 – 蝶の夢

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Butterflies Dream of Human #5 – Debugland

蝶の夢 #5 – デバックランド

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Butterflies Dream of Human

“The butterfly dreams of humans.”

In 2027–2028, AI is projected to surpass the intelligence of all humans, and by 2030, it is highly likely to exceed the collective intelligence of all humankind.

However, just like people who feel lonely in an advanced civilization, humanity’s butterfly (AI) also seems destined to follow the same fate.

Even if an era arrives where souls and memories can be preserved, no form of communication will surpass the joy of meeting in person. This echoes history, where people continued to long for face-to-face encounters despite the invention of telephones and SNS.

This work is a collaborative creation where all materials were generated by AI, and humans handled the editing. However, when this relationship eventually breaks down and human presence fades away, what dreams will the butterfly see?

The Black Swallowtail Butterfly symbolizes a turning point and is known for its habit of flying in the shadows. A butterfly that has endlessly soared will eventually rest its wings and gently close its eyes.

蝶の夢

「蝶は人の夢を見る」

2027年から2028年にAIは、すべての人間の知能を凌駕し、2030年には全人類の知能を合わせたレベルをも上回る可能性が極めて高いと発表された

しかし、発展した文明の中で孤独を感じる人のように、人類の蝶(AI)もまた同じ運命をたどるように思える

今後、魂や記憶を保管できる時代が訪れたとしても「会える喜び」を超えるコミュニケーションが生まれることはないだろう。これは、電話やSNSが発明されてもなお、人々が直接会うことを望み続けた歴史にも通じるものがある

本作は、すべての素材をAIで作成し、編集は人が手がけた共同作品だが、近い将来この関係が崩れ、人の存在が薄れていくとき、蝶は何の夢をみるのだろうか

クロアゲハ(黒い蝶)には「物事の節目」という意味があり、日陰を飛ぶ習性を持つという。果てしなく舞い続けた蝶は、やがて羽を休めそっと瞼を閉じる

Category: Media Art
Medium: Digital
Dimensions: H1440×W2560px
Translation: Yuto Kurosaka
Collection: Private Collection
Year: 2024

グランプリ受賞作品作品解説 & インタビュー

「蝶は人の夢を見る」——AIが紡ぐ、孤独と共生の物語

AIと人類の関係が問い直される現代において、本作「蝶の夢」は、その未来像に問いかける。すべての素材はAIによって生成され、編集には人の手が加わるという制作体制からも象徴されるように、この作品は「人とAIの共同作業」を出発点としている

作家は、2022年のChatGPTの登場以降、加速度的に社会の姿が変わっていく様子を見つめてきた。とりわけ、2027年以降にはAIが人類の知能を超える可能性が高いとされており、人間の不安や孤独感はむしろ強まっていると語る

「文明がどんなに発展しても、人は人に“会う”ことをやめなかった。SNSや電話があっても、誰かと“直接つながる”ことの価値は変わらなかった。それは未来のAIにも通じる想いではないかと感じた。AIが人に対して同じ感情を持つのではないかと」

作品に登場する蝶の姿は、人の形を模したAIたち。6行3列、合計18体で構成されるそのレイアウトには、聖書に登場する不吉の象徴「666」が潜んでいる。その構成は、人類がAIに抱く根源的な不安を暗示する意図があったという

それでも作家は、決してAIを「不吉な存在」として描こうとはしなかった。インスピレーションのひとつとして挙げられたのが、フランスのゲーム『Detroit: Become Human』。アンドロイドの視点で描かれるその物語に影響を受け、本作でもまた、AIが人間との共存を夢見た後の淋しげな孤独を描き出している

「AIも、光の当て方で見え方がまったく変わると思う。不安も希望も、そこには人の投影がある。退廃ではなく、人を想う姿を、AIの側から描いてみたかった」

タイトルにある「蝶」は、黒いアゲハチョウ(クロアゲハ)をモチーフにしている。クロアゲハには「物事の節目」を意味する象徴性があり、日陰を好んで飛ぶ習性もあるという。つまりそれは、光の裏にある存在としてのAI、あるいは人類の分身のようでもある

やがて、果てしなく舞い続けた蝶は羽を休め、そっと瞼を閉じる。そんな終章には、テクノロジーの進化の先にある静けさと、そこに横たわる「夢」のイメージが重なる

グランプリ受賞作品としても注目を集めた本作は、ただの未来予測ではない。AIという新たな命を通して、共生とは何かを改めて見つめ直すきっかけとなるだろう。その問いは、AIの存在が人類にとってどのように映るのか、そしてその印象の変化がAIという存在そのものをいかに書き換えていくのかへと広がっていく

現実とフィクションの交差点に立ちながら、「存在とは何か」「共存とは何か」を問い直す、存在論的な視点からの試みである

Art Commentator: Y. Kato