





The Beautiful
The ampersand (&) is a symbol that places two words side by side—without hierarchy, without judgment—and binds them together.
We, scattered across the world with different appearances and positions, long to share the worlds we each perceive through our own subjectivity. We want to feel, through our senses, that we truly exist.
Even if what we share is anger or sorrow, that’s perfectly okay.
Even if what we experience is the collapse of something together, that too is enough.
Because more than anything, what is honest and true is the act of coexisting—and connecting.
美しきこと
「&(アンパサンド)」は、二つの語句を優劣なく並列し、結ぶ記号である
見た目も立場も異なり、点在している私たちは、それぞれの主観で見ている世界を、分かち合いたいと願っている。五感を使い、存在を確かめたいと思っている
たとえば、それが怒りや悲しみであってもいいだろう
たとえば、それが共に崩れ去ることであってもいいだろう
何よりも誠実で確かなことは、共存し、つながることなのだから
Category: Sculpture, Installation
Medium: Mixed Media
Dimensions: H170×W170×D170 to H1600×W5000×D5000mm
Photography: Yudai Nakaya
Collection: Private Collection
Year: 2025
作品解説 & インタビュー
ふたつの間に生まれるもの——“&”に込めた想い
記号「&(アンパサンド)」は、本来、ふたつの語を優劣なく結びつけるための記号である。中谷の新作「&」もまた、その精神を湛えている。対立や断絶の物語が繰り返し描かれる現代において、「共に在る」という行為の複雑さと確かさに、あらためて目を向けようとする試みだ
制作のモチーフは、分断ばかりが強調される現実への違和感にあった。報道やフィクションの中では、衝撃や対立が物語の中心に据えられがちだ。中谷はそのあり方に疑問を抱き、「軋轢も均衡も含んだ共存のかたちを提示したかった」と語る
構想の中で思い出したのが、2005年の映画「クラッシュ」だったという。多様な人種や階層の人々が交錯し、誤解やすれ違い、そして予期せぬ救いが描かれるその物語は、多国籍な職場で働いてきた自身の経験とも重なった。「共存とは、理想的な調和ではなく、ときに怒りや痛みを伴う、複雑な関係性だと実感した」と振り返る
当初は、色彩や構成にさまざまな案があったが、あらかじめ意味を限定しすぎる表現はすべて見直された。「何度も見返すことで、思考が巡るような作品にしたかった」という言葉のとおり、本作は明確な答えを示すのではなく、見る者が問いを立て、自由に解釈できる余地を重視している
点として存在する私たちが、それぞれの異なる感情や記憶を手にしながら、どこかで重なり合い、つながっていく。その結び目に置かれるのが、「&」という記号なのだ
「たとえ関係が崩れていくとしても、誠実で確かなのは、“共に在る”こと、そしてつながりを感じることだと思う。その一瞬にこそ、かけがえのない美しさがある」と中谷は語る。“共存”とは、完成された理想ではなく、つねに揺らぎ、問い続けるプロセスそのものなのかもしれない
この作品は、多様性と他者との共存を基盤に、人間関係と社会の倫理を見つめ直す、現代的な哲学的実践の一例といえるだろう
※2024年の世界には、約195か国と、推定5,000〜7,000の民族が存在するとされている(Ethnologue/UNESCO調べ)
Art Commentator: Y. Kato